平成28 年12 月16 日付で日本公認会計士協会は、「社会福祉法人への公認会計士監査の導入に当たって」を公表しました。
平成29 年4 月1 日以降に開始される会計年度から一定規模を超える社会福祉法人に公認会計士監査が導入されます。会計監査人の設置が求められる社会福祉法人(特定社会福祉法人)の規模の基準は、当初は、最終会計年度における収益が30 億円を超える法人又は負債が60 億円を超える法人とされていますが、以下のように段階的に対象範囲を拡大していくことを予定しています。
・平成29 年度、平成30 年度は、収益30 億円を超える法人又は負債60 億円を超える法人
・平成31 年度、平成32 年度は、収益20 億円を超える法人又は負債40 億円を超える法人
・平成33 年度以降は、収益10 億円を超える法人又は負債20 億円を超える法人
日本の企業会計基準は、米国会計基準を参考にして次々と改正され、米国エンロン事件以降は内部統制報告制度(J-SOX)が導入され、さらに国際財務報告基準(IFRS)の導入と、国際的な統一化が進んでいます。
一方、非営利分野としては、教育分野では、学校法人会計基準も整備され公認会計士監査は実施済みですが、今回は医療分野において医療法人会計基準が整備され、法定の外部監査が導入されました。
医療法人への監査は、1年遅れ、すなわち平成29年4月2日以降に開始する事業年度(多くの医療法人は平成30年4月1日開始事業年度)から、以下の規模の医療法人が強制適用となります。
・負債50億円又は事業収益70億円の医療法人
・負債20億円又は事業収益10億円の社会医療法人
・社会医療法人債発行医療法人
教育や医療は一般企業とは違い、株主のために営利を求めることは第一目的ではありません。
しかし、学校や病院は地域を支える社会的インフラであり、例えるならば地域の住民が株主であり、健全で安定的な財務基盤が必要とされることに変わりはありません。
非営利分野への外部監査人による会計監査は、教育や医療など公的な事業を確実、効果的かつ適正に行うため、自主的にその経営基盤の強化を図るとともに、その提供するサービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図るため、法定化されています。
その趣旨から、会計監査人は単なる決算書の数字の確認に留まることなく、公的事業の継続性を保証できるガバナンス(企業統治=社風など)に関しても、問題点があればそれを指摘し指導する役割があると思います。
(文責:石野勝己)
コメント